TONmaのブログ

妄想と戯言の仮置き場です。

『ジョーカー』について

お久しぶりです。tonマです。

本当にこのブログの存在を最近まで忘れていました。

まぁ、その理由としては長文を書く理由がなかった。というのがあって…

何かに講釈垂れたかったらツイキャスやるし、一言二言レベルの愚痴だったらTwitterで事足りるよね。と言う事で放置してました。スマン。

でも今回このブログの残骸を引っ張り出してきたのは、文章で語りたい!語り合いたい!と思えるような素晴らしい作品に出会えたからです。

駄文かも知れませんがよろしくお願いします。

 

本題に入ります。

 

ブログを引っ張り出してきてまで語りたい作品とは何か。

それはズバリ

『ジョーカー 』

です。

 

ジョーカーと言えば、言わずと知れたバットマンの宿敵であり、ライバルであり、彼と対になる存在、人々を狂気に陥れ混沌を生み出すヴィランであります。

彼の行動原理はほぼ(作品にもよるが)意味不明。

一番有名なジョーカー登場作品である『ダークナイト』では、年齢も出自もなにもかも不明という解らない事尽くしのミステリアスな悪と狂気の権化、それがジョーカーです。

そんな彼の初となる単独主役作品(バットマンすらいない)で、更には彼のオリジンが明らかになるという事で、この『ジョーカー』公開前から話題騒然でした。

予告を見る限りだと、悲惨な環境に身を置く男が、社会の不条理に揉まれ、悪に染まり、ジョーカーとして開花していく…という印象を受けるので、ミステリアスな彼が好きな僕は、正直

「あの悪役には悲しい過去が」パターンか〜

と内心ハードルを激下げ、なんなら最初っからそういうスタイルの作品に対しての粗探しをしてやろう!ぐらいのテンションで行きました。

 

しかし、このジョーカー、いい意味で期待を大きく裏切ってくれました。

 

 

まず、冒頭の予告でもあった主人公アーサーが鏡の前でメイクをして口角を指で上げるシーン、からのこれまた予告であった路上のピエロパフォーマンス中に悪ガキにボコボコにされるシーン

この2つのシーンの順番が予告では逆転していて、ボコボコにされてから、狂気に陥ってからの口角指上げに見えたので、あたかも環境のせいで彼は歪みました感があったのですが、

本編初っ端から彼の狂気の笑顔を見せつけられて、「やっぱこいつ元からおかしいやつなんじゃん!」と内心ホッとしました。

 

そして、そこから主人公が突発的に笑ってしまう笑い病を患っている事、その病で昔は精神病院にいた事、売れないコメディアンである事、母との二人暮らしで家が貧しく社会的弱者である事、などの情報が提示されます。

ここの情報提示のシークエンスの中にも、彼の薄寒いお世辞にも笑えないようなジョークや、コメディショーの客席で、明らかに彼1人だけ笑いのツボがおかしいなど、従来のジョーカーらしさ(狂気)が散りばめられています。

ただ、今回がいつもと違うのは、そういった場面はあるものの、アーサー自体は

観てる人の同情を誘うよな、切なく、感情移入できるキャラ

ギリギリだけどそう見えるように描写されてます。(ヤバいやつってのは分かるんだけど)

 

しかし、そんな彼の生活に変化が訪れます。

 

彼が悪ガキに暴行された件を知った同僚の1人が心配して、彼に護身用にと拳銃をプレゼントしてくれます。

最初は拒むアーサーですが、それを受け取り携帯するようになります。

しかし、その拳銃をピエロの仕事中に観客の前で落としてしまい、それが原因で、彼はクビになってしまいます。

(ここでちょっと同僚の陰謀『ぽい』描写あり)

失意の彼は、その帰路につく途中の電車の車内で、持病の笑い病が原因で酔っ払いのサラリーマンにしつこく絡まれ、ついに彼は反射的に彼らを射殺してしまいます。

(ここ、最初の一発以外がヤケに冷静で、多分ジョーカー知らない人も「アレ?」ってなる)

(さらに言うと明らかに発砲した弾数が装填数より、多い気が…)

我に帰り、恐ろしくなった彼は走ってその場を逃げ出します。すると翌日、その事件のことが新聞に取り上げられ、更には殺されたサラリーマン達が街の上層階級のエリート達だった事から、一部からは犯人を称賛する声すら上がっているという記事になっていました。

それを観た彼は「今まで、何とも思われてなかった俺が初めて注目されてる!」と元気付けられます。

さらに、彼の住むアパートのお隣さんの女性が自分のジョークで笑ってくれ、嬉しさのあまり彼女を尾行するのですが、それがバレてしまいます。でも、彼女はそれを笑って、アーサー

「面白い人」と言ってくれるのです。

この言葉こそ、彼が求めていた言葉!

そこからは彼女といい感じになり、自分が出演するライブでも観客にネタが受け絶好調!!

良かったね!アーサー!闇落ちせずに済む!

とはいかず…

 

その後、彼は母親から自分の父親が街1番の実業家であるウェインである事実を知り、彼に接近するのですが、

ウェインからは

「お前は息子ではない」「お前の母親はイカレ野郎だ」とバッサリ………

(この途中で将来のバットマンであうブルースと出会うシーンがあるのだけど………)

さらには電車での殺しの件で警察が家に来てしまったりと、事態はまた悪い方向へ…

しまいには母親まで倒れ、最早心の支えはコメディアンへの夢と優しい彼女だけ……

 

 

 

ここからネタバレ注意

(ネタバレ知っても楽しめるのでいい人は是非読んで)

 

 

 

 

その後、アーサーは母親が過去に精神病院に居たという情報を得て、アーカム精神病院にその理由を探りにいきます。

そこで、彼は自分が養子であり、本当にウェイン家とは何の関係もない人間である事、さらには母親からネグレクトを受けており、元旦那の虐待によって自分が受けた外傷によって笑い病を患った事を知ります。

 

あぁ可哀想なアーサー……

 

ここから彼の狂行が再興します。

家に帰った彼は他人の部屋に侵入し、テーブルの上の玩具を弄ります。そこに家主が戻ってきて、彼の顔を見て唖然。

そう、その部屋は彼のジョークを笑ってくれたあの彼女の部屋なのです。

あれ?でも彼女とアーサーは親しくなかった?

いいえ、彼女との思い出は全ての妄想です。

さらにシーンは飛んで、母親を失った彼を心配して、自宅に元同僚達がやって来ます。

その中には彼に拳銃を渡し、陰謀によってクビに仕向けたあの男が!

アーサーはこの恨み!と言わんばかりにハサミで滅多刺しにして彼を殺害します!!

(ここもよく考えるとおかしな話で、自分を嵌めた相手が自分の家に心配してくるか????)

あぁついに一線を超えた!

白塗りのフェイスに返り血のアクセントを添えたピエロ姿の『ジョーカー』は彼の殺しを目の当たりにして狼狽るもう1人の元同僚にこう言います。

 

「俺、テレビのコメディショーに出演するんだ」

 

 

そう、彼は数日前にテレビのオファーを受けていたのです。

 

 

テレビ出演当日、メイクをして、スーツも着こなし、おかしなダンスもバッチリ決め、心身ともに『ジョーカー』になった彼は、電車の殺人事件の件で追って来た警察とチェイスしながらテレビ局に向かいます。

道中、彼の殺しに感化された、ピエロマスク集団が行うデモの混乱を利用し、警察を振り切ります。

そして彼はスタジオに到着。

司会のロバートデニー(このキャスティングは絶対タクシードライバーキングオブコメディへのリスペクト)は彼のピエロメイクを見てギョッとします。

「まさかデモの参加者じゃないよな?」

するとジョーカーは

「政治に興味はないので」

ここで覚えといて欲しいのが、アーサーは全編を通して、別に政治に対する不満や金持ちに対する怒りを持っていないという点です。

(個人間での怒りはあるにしろ)

そして始まる生放送(幕開けの演出最高)

あれ?念願のテレビ出演なのにジョーカーはあんまり嬉しくなさそう。

実は彼の出演は「最近話題のおかしな滑り芸コメディアン」として、さらには彼もそれに気付いていたのです。では何故出演したのか???

司会者とのやり取りの中で、ジョーカーは1つのジョークを披露します。しかし、その下品なジョークはあまりウケず…

その後、もう一つと彼が話し始めるジョークは「電車で2人男を殺した」と言うもので、笑えるどころか会場ドン引き。何故ならそれは最早ジョークではなく彼の告白だからです。

そこからは事態を危うんだ司会者とジョーカーの問答が続き、最終的にジョーカーは自分を「笑い者」にした司会者射殺。

混乱するスタジオをのカメラに向かって番組の決め台詞「コレが人生」

 

 

もうそこからは全てがカオス

祭り上げられるジョーカー、街で広がる暴動、パトカーに突っ込む暴徒達、秩序なんてクソ食らえ!金持ちどもは殺せ!

街中の怒りが爆発!コレまで陰鬱とした展開が続いてていたのでここでめちゃくちゃカタルシスが得られます。

そして、怒りの矛先である上層階級のウェイン夫妻は暴徒に殺害され幼いブルースだけが残されます。(バットマンのオリジン)

(ここが原作の逆転構造になってる)

最終的にジョーカーは拘束され、精神病院送りにされます。

 

 

 

 

そして最後のシーン

 

 

 

 

カウンセリングを受けるジョーカー 

突然笑い出します

「何がおかしいの?」とカウンセラー

「面白いジョークを思いついた」とジョーカー

「それを教えて」とカウンセラー

「あんたには理解できないさ」

このセリフの意味が分かりますか?

 

 

 

 

まず、ジョーカー(アーサー)についてもう一度考えてみましょう

この映画は基本的にずっと彼の主観で描かれます。

そして、最初で言ったように彼は間違いなく初めから狂人なのです。

笑い病というハンディキャップを差し引いても余りあるほどの常識のなさ。

さらには母親譲りの妄想癖。

(彼女のシーンはもちろん拳銃を受け取ったシーンも妄想と解釈できる)

しかし、この映画を観ると私達は至る所で彼に共感してしまいます。

それは彼が社会的弱者で、可哀想で哀れな夢見人であり、

私達と同じように見える

要素をいくつか持っているからです。

この映画を見て、「ジョーカーを狂わせたのは社会だ、コレは現代社会への批判だ」

という人がいるかもしれませんが、それは的外れな見方でしょう。

社会が彼を狂わせたのでも、彼が社会を狂わせたわけでもないからです。

何故なら彼が英雄視された要因は電車でエリートを射殺したからですが、彼の殺人に政治的意図はありません(劇中でも政治に興味は無いと断言している)単にムカついた。からです。

さらに、ジョーカーの素、彼の中の狂気が生まれた要因も母親のネグレクトからというよりは先天性のもの言った方が説明がつきます。

(「コレが自分だ」と自分で言ってるし)

ここまで彼のキャラクターを読み解くと大体分かると思いますが、彼はただの狂人で、「たまたま」彼がいる社会が腐敗しており、「たまたま」彼が殺した対象がヘイトを集めていた。

というだけの話を完全に彼の妄想が入り混じった、独りよがりの主観の映像で見せられる。

 

コレが

 

『ジョーカー』

 

という作品なのです。

 

しかし、我々は彼に共感してしまった、こんな狂人の主観の世界に!!!

我々はジョーカーの物語をみて彼と感情を共有し、彼に同情までしてしまった!!!

 

さぁ、ここで、最後の彼の台詞を振り返ります

 

「面白いジョークを思いついた」 

(実は、ここの時系列をどこに置くかでこの映画自体が彼のジョークであると捉えることができる作りになっています)

でも…

「あんたには理解できない」

いいえ、私達は理解『してしまった』

それがこの映画の本質であり、ジョーカーの行動理念そのものであり、彼の、そして私達の狂気のオリジンなのです。

 

ちなみに、原作コミックでのジョーカーはバットマンに人々は皆自分のように狂気を内包しており、バットマンも例外では無いと主張しています。

それに対してバットマン「違う、狂っているのはお前だけだ」と返しています。

 

 

果たして私達はそう言い切れるでしょうか??